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STAFF PRODUCTION NOTE 第2回 待田堂子(脚本)すれ違いや葛藤―各キャラの様々な心の動きの裏側にあったもの

YouTube版に続き、劇場版でも『ポールプリンセス!!』の脚本を担当した、待田堂子氏。
ポールダンスに全力で取り組む少女たちの心情をどのように描き、ダンスシーンにさらなるカタルシスをもたらしてくれたのか。
その裏側を、作品への強い愛とともに存分に語ってもらった。

たくさんの愛を感じ、衝撃も受けた『ポールプリンセス!!』という作品

――『ポールプリンセス!!』は劇場版のロングランをはじめ、作品ファンの方の愛を受けて様々な展開が続いてきていますが、待田さんはファンの方からのそんな『ポールプリンセス!!』への愛を実感する瞬間はございましたか?

待田堂子 はい。最初にそれを感じたのは、公開直後のイベントで登壇したときでしたね。既に何度も観られているという方が、結構たくさんいらっしゃっていたのには驚きました(笑)。あとはロングランになったということ自体もですし、SNSでも「映画館で結構盛り上がってる」という書き込みを目にしたりと、じわじわ来ているという雰囲気や皆さんの熱量のすごさを感じていました。

――盛り上がりが広まっていく様子が、SNSなどで結構可視化されていたように感じられていたというか。

待田 そうですね。それは私以外の制作陣も感じていたと思います。そんなに広く認知されていないであろうオリジナルアニメ作品が、ここまでじわじわ広がっていくというのは自分にとってもすごく新しい経験でしたね。応援上映も、最初のうちはおっかなびっくりだったみたいなんですけど、それが徐々に盛り上がっていったというあたりから輪の広がりを感じていました。

――ファンの皆さんが鑑賞を重ねられていくなかで、共有されていった楽しみ方が、まさに草の根的に広がっていったんですね。

待田 そうみたいです。何かものを作っているときって、私を含め作り手はきっと「こうしたら、こういう反応があるかな?」みたいな想像をしているとは思うんですけど、今回はそれこそ想定外に「え、そこ気に入った!?」みたいな部分もあって(笑)。きっと、何度もご覧になったからこそ見えてきたものがあったんでしょうけど……それもまた、すごく勉強になりました。

――一方で『ポルプリ』は、スタッフの皆さんの愛にあふれた作品でもあります。なので待田さんご自身がもしいちユーザーとして『ポルプリ』に接していたとしたら、どんな部分が刺さるように思われているのかをお聞きしたいのですが。

待田 シナリオの要素になると手前味噌になってしまうので、そこを避けますと……やっぱりダンスシーンですね。私もいろんな作品のダンスシーンを観てきましたけど、あそこまでキャラクターに寄せたものを観るのは初めてなんですよ。きっとご覧になった方々も強く感じられていると思うんですけど、本当にすごく細かい表現をしていただいていて。各キャラクターの個性が、楽曲やポールダンスの中にものすごく表れているんですよ。

――YouTube版の時点でもこだわりを強く感じる仕上がりでしたが、それが劇場版でさらにスケールアップしていましたからね。

待田 そうですよね。回を重ねるごとにすごくなっていって、作品イベント“Wish Upon a Polestar”でヒナノの「Wish upon a polestar」のダンスシーンがお披露目になったときには、本当に驚きでした。でも劇場版を初めて観たとき、ダンスシーンがそれを遥かに超えるもので……「今までに観たことないダンスシーンだ!」と思いました。

――シングルスはもちろん、ダブルスの衝撃もものすごかったですし。

待田 あれは、乙部さんの気合いのなせる技だったんじゃないでしょうか(笑)。シナリオの執筆時点で「ここにダンスが入ります」みたいな部分があるのである程度ダンスについての想像はしてはいましたけど、とはいえ実際CGが出来上がるまでは、ダンスがドラマの中にどう生きてくるのか、私の中で未知数なところもあったんです。だからこそきっと、劇場版を初めて観たときにファンの方と同じような衝撃を受けたんだと思うんですよ。それこそ、今までの「CGでのダンスシーン」という概念を覆されてしまうくらいで……。

――ライブパートのある作品は数多くありますけど、そのどれとも違った魅力がありますもんね。

待田 そうですね。特にアイドルモノだと全員で同じ振付を踊るようなことが多いとは思うんですけど、さっきお話ししたようにキャラクターごとの個性にあふれていて。ポールダンス自体、すごく個性の表れるものなので、そこを表現できているのは素晴らしいことだなと感じました。それと、公式YouTubeには実際にダンスを当ててくださった先生方のダンスとの比較動画が上がっていますけど、あそこまで忠実に再現できるというのもまた驚きでしたね。

ダンスシーンをより響かせる、ドラマパートに込めた様々な意図

――そのダンスが観る側に響くのも、その前のドラマパートでキャラクターの個性や心情が描かれているからこそだと思います。

待田 ありがとうございます。もしそれを感じ取っていただけるものになっていたとしたら、その要因としてすごく大きかったのは、取材を通じて実際にポールダンスをやられているヒナノたちと同世代の方々のお話を聞けたことだと思います。それとあわせて私自身もちょろっとだけポールダンスを体験しまして、その中では何か語れるほどの経験はできなかったんですが(笑)、そのときの取材でいただいた言葉から「これは、こういうことかな?」みたいに想像したことをシナリオに落とし込むことができまして。取材させていただいたからこそ見えてきたものもたくさんあって、それもシナリオにかなり反映できたんですよ。

――取材を通じて、ポールダンスに取り組む子たちの物語としての解像度が非常に高くなったといいますか。

待田 そうなんです。そもそも私は、「何かに取り組む女の子たちがリアルに頑張る姿」というものは描けたらいいなぁと思っていたんです。もちろん『ポルプリ』はドキュメンタリーではないですけど、生の声を聞けたことでエピソードにより真実味を帯びさせることができましたし、それぞれのキャラクターに厚みを増させることもできました。やっぱり、自分の想像だけで描けないものって存在するので。

――ということは、キャラクター像にも取材で感じられたものが反映されていった部分も?

待田 ありますね。取材前からキャラクターはある程度は固めていたんですけど、おかげで深みみたいなものはさらに出すことができました。あと、企画段階から皆さんと打ち合わせを重ねていくなかで、とにかく「キャラがそれぞれかぶらないこと」と「“この子しか言わないセリフ”や“この子しかしない行動”」みたいなものには結構注力していったので、YouTube版も含めた短い尺の中でキャラクターの棲み分けもできたんじゃないかなと思っています。

――それを脚本の中に反映させていくなかで、どんなことを特に大事にされましたか?

待田 今回は「意地悪な子がいなかったりものすごい逆境がなかったとしても、人の気持ちが動かせる話がいいかな」と思っていたので、その「すごく意地悪な子がいない」というところですね。実際の世の中には悲惨ないじめなども存在してはいますけど、そんなに毎回意地悪な子と一緒になるわけでもないじゃないですか?だから、意地悪な子がいなくても心が動くようなお話にはしたかったんですよ。例えばユカリも、登場の仕方がヒナノの対極にあるように見えるかもしれませんけど、実はユカリにもユカリなりの正義というか想いがあって。決していじめ役としては出てきていないというのは、こだわっているところでもあります。

――劇場版を最後まで観れば、結局“不器用な子”なだけだとわかりますし。

待田 そうなんです。自分に対して厳しすぎるきらいがあるのと、まだ幼かったというのもあって、本当に「もっと頑張ってほしかった」という想いが強くて、ヒナノへのあのひと言が出てしまったんだと思うんです。エルダンジュの3人で楽屋で話しているときにも厳しいことを言ってはいますけど、そんなにギスギスしてはいませんし……それはサナとノアがユカリのことををよくわかっているから、というのもあるんですけど。

――あの3人の関係性は、とてもいいバランスをしていますよね。

待田 そうですね。その中で、あのユカリのちょっと抜けた感じは、監督が強く「欲しい」とおっしゃっていたものだったんですよ。私もあれは、本当にいいなぁと思っていて。

――たしかに、ひとつのことにすごく秀でている人って、どこか抜けているほうがリアルだと思います。

待田 そうなんです。私 、ユカリってポールダンス以外の日常部分は大したことない子なんじゃないかなと思っていまして(笑)。運動全般はいろいろできるけど、日常生活ではサナもノアも「あーあ」と思うようなところがいっぱいあるから、すごくうまく補完しあっているんじゃないかな……と想像しているんです。

――あのスリッパのまま帰ろうとしてしまったシーンのように。

待田 そうなんですよ。たぶんあのときは、サナもノアも「いつものだな」と思ってたんじゃないかな?って(笑)。そういうふうに、単純に「なんでもできちゃって、人間的にも完璧」なわけではなくて、「今はポールダンスのことばかりを考えてるから、日常の中の何気ないことで抜けちゃってるところがある」というほうが人間的でかわいいですよね。

――一方でギャラクシープリンセス側の関係性に目を向けると、ヒナノが自分の弱さと戦いつつも、4人の中ではいろいろ優しく受け止めるような立場にいるように思います。

待田 それはやっぱり、自己肯定力が低いところからのスタートだからだと思います。ポテンシャルはあるし、もっと自信を持ってもいいような子なのに、何をやるにもいちいち躊躇しちゃうタイプで。そんな彼女の背中を幼い頃から押してくれるリリアとは、すごく相性のいいコンビになるんですけど。でもだからこそ、ユカリに何気なく言われてしまったことをずっと引っ張ってしまったり……リリアだったら、3歩くらい歩いたら忘れちゃいそうなことを(笑)。だけど、そんなヒナノだから他人のうまくいかないことに対してはすごく気配りができたり、想いが汲めるんじゃないでしょうか。

――また、この4人の中では比較的ミオが語られていない部分が多いような印象もあります。

待田 ミオはサナに大きな憧れを持っている子で、かわいいものもコスプレも好きでのめり込んでやってはいるんですけど、その中で「頂点に立つ」みたいなバイタリティまではなかったんです。だけど、みんなの衣装を担当したりしているうちに、自分のやるべき道を見出していったのかな……と思っています。

――ジャパンカップでは、本番前の控室でエルダンジュのパフォーマンスを見て火がついた描写もありました。

待田 はい。あとは衣装を作っているときにヒナノが気にしてくれて、でも「これは自分にとってすごく楽しいことだから、ヒナノちゃんにはやらせてあげません」みたいなことを言うシーンもありましたよね?あのあたりから、ミオは大会が楽しみになってきているところがあるんですよ。でもあの段階では、ミオがタイトスカートを使ったあんな難易度の高いポールダンスをするとは想像もしていませんでした(笑)。上映会か何かのときにKAORI先生が「あれは普通できないです」とおっしゃっていたので、「たしかに……」と思って聞いてましたけど。

――それを教えられるアズミ先生もすごいですよね。

待田 うん。アズミ先生はやっぱり「すごい人」なので。劇場版の中だけでもコロコロ表情が変わったりしますけど、本当にKAORI先生みたいなんですよね。どんどん先生に寄って行っちゃっているようなところもあるんですけど。

すれ違いや葛藤――各キャラの様々な心の動きの裏側にあったものとは

――そういうキャラクターの個性や魅力を60分の中に詰め込みながらも、物語として絶対守りたい・伝えたいと思われていた要素はどんなものだったのでしょうか。

待田 あくまでも今回は「ポールダンスのシーンに向けての助走」と考えていたので、ダンスに繋げるために「どうしてこのダンスをするのか?」という理由を描いていかないといけないと思っていたんです。尺との兼ね合いでエルダンジュのほうは描けていないんですけど、ギャラクシープリンセスのほうは「どういう想いでジャパンカップに臨んだのか」を前段で描いて、後半ダンスで表現する……というイメージをしていました。ただ、やっぱり60分はちょっと短いですね(笑)。

――しかも、後半にあれだけ曲数があるうえでの60分ですから。

待田 そうですね。最初は「予選のところも描こうか?」というお話もあったんですけど、最初に長めに考えたものをギュッと圧縮したので、お話としてはちょっと駆け足ではありますけど割と濃厚にうまくまとまったなというか……むしろ「まとめていただいた」とは思っています。

――そこは、監督や乙部さんたちと一緒に。

待田 そうですね。シナリオの段階から皆さんと本読みの打ち合わせをさせていただいて、そのなかで「ここを削ろう」とか「ここは残そう」みたいに話し合っていって……それでも「まだ多いね」という部分はあったんですけど。でも無駄なく圧縮されつつ駆け足になりすぎずに魅せるべきところは魅せられたというのは、やっぱり監督のコンテの手腕だと思います。

――そうやって様々なシーンを詰め込まれていったなかで、御自身で執筆されて特に印象深かったシーンを挙げるなら、どんなところになりますか?なかなか絞るのは難しいかとは思うのですが……。

待田 そうですね……あえてひとつ挙げるとするならば、やっぱりリリアとスバルのシーンのアツい展開はよかったなとは思っています。あの2人は特に自分の気持ちをちゃんと言える子たちだから、そういう意味でお互いの意見をぶつけても一方的な感じにならないし嫌な感じもしないだろうなということで、今回この2人にダブルスを組んでもらったんです。本当はこの2人のシングルスも観たいところではありましたけど、そこは致し方ないな……と思いつつ。ただ、あの展開のアツさはシナリオだけでは表現しにくいもので、あの大会でのダンスシーンでバシッ!と手を繋ぐところまでセットで描くことができてよかったです。

――スバルがリリアと一緒にトラウマを乗り越えられた瞬間だったので、観ている方の感動を誘うポイントのひとつになりましたよね。

待田 実際のシナリオの執筆段階ではまだダンスがどういう感じになるのかも決まっていませんでしたし、このシーンこそCGでどうなるのかが私の中で未知数だったところなんですけど、フルCGでパシーッ!となっていたのを観たときには感激しましたね。2人とも、すごくかっこよかったです。……靴も光ってたし(笑)。ダンスシーン、全体的にかっこよかったですよね。

――その2人は、実はハンバーガーショップのシーンなどで、その行き違いの前は結構ツーカーのやり取りをしていますよね。

待田 そうなんです。ただ「試合」というものに慣れていないリリアと、体操を通じて「試合」というものや挫折を経験して勝ち負けにこだわっているスバルとの間にズレがあったんだと思うんですよ。地方大会でミスがなかったのに全然いい点になっていなかったことは、やっぱりスバルにとっては屈辱で。いわゆるアスリートには当然「なんとかしなきゃ!」みたいな想いが芽生えてくるとはずなんです。でもリリアはまだ“アスリート”にまではなれていないので、「いいじゃん!ミスしなかったんだから!」みたいな感じなんですよ。

――そういった、「試合」というものの見え方へのズレがあったんですね。

待田 はい。だから過去に大きな失敗をしているスバルは、「大技をやってもし失敗したら……」ということまで考えたうえで、リアルに勝ちにいきたいんです。でもリリアが「大技やろうよ」と言っているのにも一理あるんですよ。「そこまで勝ちにこだわるなら、挑戦すればいいじゃん!」という考えあってのものだから。その2人の想いが、観ている人にとっても「どっちもわかるよね」というものになればいいなと思っていました。

――こういった、キャラクターのポールダンスへの向き合い方や意識にも、先ほどおっしゃられたポールダンスをやられている方からのお話が影響しているような部分はあったのでしょうか?

待田 ありますね。私自身インドア派でスポーツにあまり打ち込んだことがなかったので、まさに今回のヒナノたちのような「『試合に負けて勝負に勝った』という言葉って、本当にアリなのかな?」と思っていたんです。でも取材で直接うかがったお話や、アスリートの方がお話されている記事を読んだりして、「なるほどな」と思ったことも多くて。競技に向き合っている方たちにとって「惜しくも勝ちには手が届かなかったけど、何か満足感がある」というものは、実際にも存在することを学びました。

――アスリートならではのものという意味では、エルダンジュの側も「常勝する者の悩み」が描かれていましたね。

待田 やっぱり何においても強力なライバルがいたほうが上に行けるものじゃないですか?でもエルダンジュは頂点に立ってしまっているので、ユカリが言っていたように自分との戦いになっているんです。ただ、ユカリというキャラクターはそこで満足していないので、「休まず練習」みたいに他の2人を引っ張っていっているところがあるんですよね。取材の中でも、「国内では結構優勝したりしていても、海外に目を向けるとまだまだ上の人がいる」とおっしゃっていた方もいたので、「完全に頂点に立つ」ということはなかなか難しいんだと思うんです。だからユカリも「てっぺんには簡単には届かないし、上に登ったと思ったらまだ上がある」みたいな気持ちでいるのかな?と想像しています。

――そうやって様々なものを脚本に詰め込まれたこの作品は、ダンスシーンの他にも声優さんたちの芝居や音楽がついて映像として完成しました。待田さんが完成版をご覧になって、より好きになったシーンはありますか?

待田 まずCGの中の、ユカリのダンスシーンは言わずもがなでしたね。想像を遥かに超えたものになっていて、“びっくり”を通り越して“驚愕”という感じがしました(笑)。

――単なる驚きの、一段上の驚きが。

待田 そう!もう「はぇーっ!?」という感じでした(笑)。もちろん、その他全員のダンスシーンにはそれぞれの見せ場がありますし……その中でも、一番「どうなるのかな?」と思っていたスバルとリリアが手をバシッと繋ぐシーンに関しては、ダンスの中であんなふうに描かれたというのが私にとっては感動であり衝撃でした。そんなふうにある程度想像していたものを遥かに超えた映像にしていただけてすごく嬉しかったですし、おかげで一番好きなシーンになりましたね。

“エピソード0”の可能性もアリ? まだまだ描き足りない『ポルプリ』の世界

――さて、序盤でも少々話題に出ましたが、劇場版Blu-rayの特装盤にはスペシャルイベント“Wish Upon a Polestar”の模様も収録されます。

待田 私は昼の部にお邪魔したんですが、声優さんたちの歌とポールダンスのショーがあったことにまずびっくりして、「すごいなぁ」と思いました。劇場版もあのイベントで発表されて、ティザーのヒナノとユカリのポスターも貼られていたんですよね。で、そのとき初めて土屋(李央)さんにお会いしまして。2人して興奮が冷めやらなくて、挨拶もそこそこに土屋さんが「めちゃめちゃヒナノがキリッとした顔してますねぇ!」みたいにすごく喜んでいたことをよく覚えています(笑)。

――そのときは、キャストの皆さんは劇場版のストーリーをご存知だったんですか?

待田 いや、まだ脚本が渡っていなかった頃で、アフレコはイベントの直後ぐらいから始まったらしいんですよ。私自身がシナリオを執筆していたのは一昨年の夏だったのでイベント時点では脚本は既にできていたんですけど、そういう時期だったので内容についてはまだ全然お話しできず、土屋さんが興奮していたのに対して「そうですねぇ」ぐらいのことしか言えませんでした(笑)。

――ああいったイベントで、声優さん自身が歌いながらダンスもやるというのではなく、ポールダンサーさんのダンスを背負って歌うというのもなかなか斬新ですよね。

待田 そうでしたね。しかも、すごく凝っていただいていて。声優さんたちもその後ろでダンスしていただいた先生方も素晴らしかったですよね。お客さんは、おそらくほぼほぼ“ポールダンス”というものを観たことなかった人たちばかりだったと思うんですけど、声優さんの歌とポールダンスの相性の良さを体感して「ポールダンスって、こんなふうにもできるんだ!」と感じた方は、多いんじゃないでしょうか?

――おっしゃられたように、初めて生のポールダンスに触れたことで、イメージが変わった方もたくさんいたと思います。

待田 私自身も正直、この作品に関わるまでは生でポールダンスを観たことがなくて、よくある「海外ドラマのお立ち台みたいなところで踊ってる人たち」というイメージしかなかったんです。でも最初にKAORI先生のところにうかがったときに、男女問わず幅広い年齢層の方がやられていることを初めて知って、すごく魅せられてしまったんですよ。なので、このイベントを通じてポールダンスというものに対する印象が変わった方や、興味を持った方は絶対いらっしゃると思うんですよね。

――しかも、このイベント開催後には劇場版を経て楽曲自体も増えているので、その新曲も含めたステージも観たくなってしまいます。

待田 たしかに。……あのイベントをご覧になった方は、ある種“選ばれし民”で(笑)。だから、劇場版をご覧になって初めて知った方には「イベント行きたかったなぁ!」という気持ちがあるはずなので、それがBlu-rayに収録されているというのはすごく嬉しいことなんじゃないでしょうか?あのパフォーマンスをご覧になることで、ポールダンスというものへのイメージがまた少し変わるでしょうし、作品を観たときの面白さも倍増すると思っています。

――そのイベントのラストを飾った主題歌「Starlight challenge」になぞらえてお聞きします。ファンの方も“次”を期待されているなか、待田さんが『ポールプリンセス!!』という作品を通じて次に挑戦してみたいことを挙げるなら、どんなことですか?

待田 まず私、皆さんのエルダンジュへの妄想が膨れ上がっているのを感じていまして(笑)。過去についていろんな想像をされている方もいらっしゃると思うんですけど、私自身もまだまだ描ききれていない彼女たちの深堀りもしたいですね。あと、アズミ先生もいったいどんな人だったのかを描きたいですし……。

――エピソード0のような。

待田 そうですね。あとはギャラクシープリンセスも、さっき言ったようにジャパンカップに参加したことでみんなポールダンスへの向き合い方も少し変わっていくと思うので、そのあたりもまだまだ描けるはずなんですよね。

――そういった部分は、特装盤付属の新規書き下ろしドラマCDでも描かれるのでしょうか?

待田 いや、そこでは先ほどチラッと言った、大会前のそれぞれの意気込みみたいなエピソードが収められていまして。4人と3人の、それぞれの楽しい会話といいますか……ヒナノたちの大会に向けた「やるぞー!」みたいな会話やエルダンジュの日常が垣間見えると思うので、そちらもぜひ楽しみにしていてほしいです。

――「エルダンジュの日常」は、また気になるフレーズですね(笑)。

待田 日常って言っても、まぁユカリなりの日常なんですけど(笑)。スタッフさんからは「ユカリ様のぽんこつ具合がとてもいい」と感想をいただいているんですが、それは皆さんがあんなにスリッパで喜んだからで(笑)。そのスリッパに匹敵するぐらいの……でもユカリがユカリとしている感じ。「あー、ユカリだよね!」という感じはなっています。もちろんそれはエルダンジュだけじゃなくて、ギャラクシープリンセスも。4人ともそれぞれ“らしい”姿をお届けできていると思っています。

――描く余地といえば、キャラクター名だけ出てきてはいるものの全く描かれていないキャラクターもいますし。

待田 そうですね。スパイラルガールズとか……あの子たちは元々噛ませ犬みたいな感じで出てくる予定ではあったんですけど(笑)、尺の都合で出てこられなくなってしまったんです。そういう部分を皆さんに想像していただく楽しみもありますけど、やっぱりこちらが元々考えていたこともあるので、まだまだいっぱい思い描いているところはあります。

――では最後に改めて、さらなる展開を楽しみにしている『ポールプリンセス!!』ファンの皆さんへのメッセージを、ひと言お願いします。

待田 皆さんが私の想像を遥かに超えるほど『ポールプリンセス!!』を愛してくださっていることを、心からありがたく思っています。ずっと観続けていただいていることもすごくありがたいですし、皆さんと同じように私も、今後何か展開があるといいなと願っているので……きっといろいろな形で『ポールプリンセス!!』はまだ展開していくと思うので、今後ともよろしくお願いします!