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STAFF PRODUCTION NOTE 第3回 江副仁美(監督)「楽しい!」の次を示した、“二歩目”の劇場版

『劇場版 ポールプリンセス!!』の Blu-ray Disc リリースを記念して、江副仁美監督へのインタビューを敢行。
自身の持つ熱い『ポルプリ』愛をにじませつつ作品づくりの様々なポイントに込めた意図やねらいについてじっくり解説していただき、
これからの『ポルプリ』についての構想についても明かしてもらった。

一瞬の情報から聖地巡礼!? 痛感した『ポルプリ』ファンの愛の大きさ

――『劇場版 ポールプリンセス!!』は非常にロングランとなりまして、その後も全国ツアー上映やオンライン上映会など、作品ファンの方の愛が様々な展開を実現させてきました。江副監督自身は、ファンの方からの『ポールプリンセス!!』愛をどんな瞬間に実感されていますか?

江副仁美 何度も劇場に通ってくださっているというのをSNSで見たりしたときには、「本当にありがたいな」と思いました。それ以外にも、八代市に聖地巡礼しに行ってくださる方もいるみたいで。作中に出てくるようなハンバーガーショップや焼肉屋さんに行かれていたり……ヒナノのおばあちゃんのプラネタリウムのモデルになったところなんて、山の上にあるのでとても大変なはずなんですけど。

――八代まで行かれた方もいるというのは、すごいですね……!

江副 ロケ地を特にテロップで出したりしているわけではないので、皆さんで調べて行ってくださっているんだと思うんですよね。あとは実際にポールダンスを始められたり、ファンアートを描かれたりぬいぐるみを作られたりといったいろんな活動を見たときにも、ありがたさと愛を感じます。そういうことをするためには体力も時間もすごく使いますし、本当に好きじゃないとできないと思うので。

――ロケ地以外にも、ファンの方の着眼点の細かさなどから愛を感じたこともありましたか?

江副 ありますね。意図的に仕込んだところもあるんですけど、例えばリリアのスマホが割れていたりしたのは(笑)、さりげなく入れたつもりではあったんですけど気づいてくれていて。あとは、ジャパンカップの結果発表で一瞬だけ見えた他の入賞者の名前から「この子はどんな子なんだろう?」みたいに予想してくれている方もいるみたいで。映画館だと早戻しして確認したりできないはずなのに、1~2秒しか映らないものを認識できるぐらい何度も観て、細かい部分まで注目してくださってるんだな、とすごく感じました。

――そういった愛を受けて長く展開が続いていることは、当初の想定の中にありましたか?

江副 オリジナル作品なうえにYouTube版でしか展開していなかった作品なので、最初は「どれだけの方が来てくださるだろう」という心配が結構あったんです。それがこんなロングランになったということは、本当に嬉しい誤算というか……七夕のオンライン上映会(2024年7月7日実施)もすごく盛り上がっていただけて。全国各地の方たちと楽しめるという機会ができたことも、本当にありがたかったです。この劇場版Blu-rayも、劇場に行くのが難しかったという方にお手に取っていただけて、さらにその輪が広がっていったら嬉しいです。

――ちなみに『ポルプリラジオ』の10回目で、ヒナノ役の土屋李央さんとリリア役の鈴木杏奈さんが「制作の方も『ポルプリ』のオタクなんですよ!」と嬉しそうにおっしゃられていたのですが、監督自身がもしユーザーとしてこの『ポールプリンセス!!』という作品を観たとしたら、どんな部分が刺さるように思われますか?

江副 ポールダンスの美しさはもちろんなんですけど、おそらくポールダンスのアニメってこれが初めてかなと思うので、そういった斬新さについても「すごいなぁ」というふうに感じるかもしれませんね。あと、キャラクター作りにあたっては初期のメインスタッフみんなで「こういう子がいたらいいね」みたいに案を出し合ったので、どの子も本当にかわいくて。やっぱり作ったからにはどの子も愛されてほしいですから……そういう想いがファンの方々にも届いているのであれば、嬉しいですね。

「楽しい!」の次を示した、“二歩目”の劇場版

――さて、劇場版ではYouTube版から一歩進んで、ギャラクシープリンセスが全国大会である“ポールダンスジャパンカップ”へと挑戦しました。なので、YouTube版とはテーマが変化したり、増えたような部分もあったのでは?

江副 はい。YouTube版は「ヒナノたちのポールダンスとの出会い」をテーマにして、「ポールダンスって、こんなに楽しいんだ!」というところを描いていたんですね。劇場版では大会に出場して、YouTube版では絡ませられなかったエルダンジュを間近で見ることで、「楽しい」だけじゃなくて「もっと極めていきたい、成長したい」という気持ちにもなる。それがこの劇場版なのかなぁと思っています。あと、劇場版では初めてダブルスも取り扱いまして。そのなかで、尺の都合上残念ながらユカリとサナのダブルスのバックボーンについては描ききれなかったんですが、リリアとスバルに関してはパートナー同士の絆みたいなものも描けたと思っています。

――その2人の関係性含め、劇場版は特にギャラクシープリンセスの4人がいろいろなものを乗り越えていく姿も印象深かったです。

江副 やはり大きく成長するためには、ハードルを乗り越えないといけない……というところで。特にわかりやすいのはスバルとか、あとはユカリのトラウマを払拭していくヒナノだと思うんですけど。そうやって仲間の力を借りて乗り越えるというのは、王道といえば王道なんですけど……青春モノとして、葛藤からの成功体験みたいなものは気持ちいいと思うので、そのあたりはテーマとして盛り込んでいきました。

――劇場版の中だけでもどんどん変化し成長していく各キャラクターを、より魅力的に描きつつ“らしさ”も伝えるために、意識されたことはどんなことでしたか?

江副 やっぱり限られた尺の中で7人……アズミ先生も入れると8人のキャラクターに、それぞれ“らしい”セリフや行動を取らせることってけっこう難しいくて。なので、着ているものや持っている小物などでそのキャラクターらしさみたいなところを演出できるようにと、そういう細かいところは気にしていたように思います。あと、焼肉ではシーン担当の作画さんや演出さん、作監さんがキャラの性格に応じて飲み物やおしぼりの置き方を考えてくれたり……「リリアだけ食べる気満々で、もう皿にタレが入ってる」みたいな細かいアイデアも出してくださっているので、あそこのテーブルは観ていてすごく面白いです(笑)。

――また、YouTube版の時点では伏せていた設定などを劇場版でオープンにして、キャラクターの魅力をより深堀りしたところもあったと思うのですが。

江副 そうですね。大きなところで言うと、それにあたるのはやっぱり、ユカリとヒナノの関係性でしょうか。YouTube版では特にユカリの情報があまりなかったので、ユカリについて「怖い人なのかな?」みたいな認識があった方も多かったと思うんですよ。大会前のヒナノもたぶん、そう思っていたでしょうし。でも劇場版ではそれ以外の側面も、尺をなんとか絞り出して(笑)、やっとちょっとお見せできたんですよね。短いシーンではありましたけど、ユカリがエルダンジュの中ではすごくリラックスしていて、「実はこんな子だったんだよ」というのをちょっとだけでもお見せできてよかったです。

――スリッパのまま帰ろうとしてしまったシーンは、「ただの怖い人じゃないんだ」とわかっただけでなく、ぐっとファンが増えた瞬間でもあったように思います(笑)。

江副 ありがとうございます。そこはやっぱり、入れたかったところだったんです(笑)。その

「天然ぶり」というのは、やりすぎるとあざとくなりすぎてしまうので塩梅が難しかったんですけど、スリッパで帰っちゃうというのは割とあるあるでもある気がするので、共感していただける方もいるんじゃないかな……と思いました。ただ、今回そういうふうに描けたのは、ヒナノとユカリぐらいで。特にエルダンジュ側については、ノアやサナが何を考えているのかとかはあまり描けなかったので、今後はそういったところも出していきたいですね。

――描かれていない部分が多いといえば、ヒナノがトラウマを乗り越えたりリリアとスバルは中盤で想いをぶつけあったりしている一方で、意外とミオも語られていないように感じました。

江副 たしかに。一応衣装を縫うシーンなどが見せ場になっていたり、自分の出番の前に少し不安になっていたところで、女の子に「マーメイドだ!」と言ってもらえて人魚になりきれる……という描写はありましたけれども。ただ、ミオってギャラクシープリンセスの中だと情報を持ってくる子だったりもしますし、物語を動かしていくのにもすごく活躍してくれる子でもあるんですよ。

――言われてみれば、序盤でエルダンジュの配信ライブを4人で観るきっかけを作ったり、自然と話を進行させてくれる子でもありますね。

江副 そうなんです。それに、まあまあ我も強い子だとも思うので、追い追い掘り下げていっていろんな一面をさらにお見せしていきたいですね。

監督が印象深かったシーンは、やや“王道”多め?

――続いて、監督ご自身として印象的だったシーンや、そのシーンでのこだわりなどについてもお聞きできますでしょうか。

江副 私自身が王道やベタが好きなので、割とわかりやすいと思うんですけど……やっぱりリリアとスバルの公園でのシーンは、綺麗な映像をお見せして感動させられるようなものにできたらと、夜空をすごく美しくしたり……そのあたりは、美術さんがすごく頑張ってくださったんですよ。ちょっと曇っていたところから始まって、和解した後には晴れ渡った空で星が瞬いている……という。わかりやすい演出ではありますけど、音楽も相まってすごく綺麗なシーンになりました。

――しかもBGMが、リリアのソロ曲「とびきり上等☆Smile!」のインストアレンジでしたよね?

江副 いや、そうなんですよ!あれ、すごくいいですよね(笑)。私もダビングのときに聴きましたけど、リリアがニッと笑ったところで「さぁ笑って!」のフレーズになったときには(音楽の)東大路憲太さん「天才だなぁ!」と思いましたし(笑)、あのシーンは歌を聴いてから観てもらえるとよりぐっとくるはずです。あと、ラストシーンの階段のヒナノとユカリのシーンもこだわりました。綺麗な夕陽の中、大会前は階段の下にいたヒナノがユカリと同じ段に上がって握手するというのが、わかりやすくて美しいかなと思って。そのシーンも、撮影さんや美術さん、色彩さんもすごく素敵に仕上げていただいてとても美しいシーンになって、私もラッシュで観たときに感動しました。

――ヒナノとユカリで言うと、ヒナノの演技中にユカリが袖から観ていて、しっかりやっているのを観て微笑む……というシーンも素敵でした。

江副 ありがとうございます。ヒナノが演技中にトラウマを思い出して、みんなの力と自分の力で乗り越えていくというお話だったので、多少は圧をかけてもらわないといけないかなと(笑)、舞台袖まで来てもらいました。でもユカリ自身には圧をかけるようなつもりは全くなくて、ただ「近くで見たかっただけ」なんですよね。

――だからこそ、小さい頃のバレエも袖から観ていたわけですもんね。

江副 そうなんです。悪気はないんだと思うんですけど(笑)。

――エルダンジュの2人は、あのタイミングで出ていったのをどう捉えているんでしょう?

江副 その辺もまだあまりしっかりと描けてはいないんですけど、基本的にサナとノアはユカリに絶対的な信頼を置いているというか。心配とかはしていると思うんですけど、信頼しているからこそユカリのやることにいちいち口は出さない……みたいな感じにはしていますね。大会前にヒナノとユカリが会ったときにはユカリが無視して行っちゃうような形になりましたけど、あのときのユカリは、自分の中でぐるぐる考えてて答えられなかったという感じで。それについてもユカリが自ら話してくれるまでは言及はしない……みたいなのが、エルダンジュの関係性なのかもしれませんね。

――ある種それが、信頼感の表れでもある。

江副 ですね。あの3人もすごくいいキャラクターたちなので、ぜひいろんな面を出していきたいです。

劇場版のダンスシーンに、江副監督が込めたかったものとは

――さて、劇場版では新曲もたくさん生まれていますが、やはりそれぞれダンスシーンでカタルシスが生まれることを狙って作られたのでしょうか?

江副 はい。勿論ダンスシーン単体でも充分楽しめるものではあるんですけど、ドラマシーンと合わせて観てもらって「どういう思いを持って踊っているのかな?」ということを知ることができると、さらに楽しんで観ていただけるようには作れたかなと思っています。

――ではその劇場版の新要素である、ダブルスについてのお話をお聞きします。ダブルスだからこそ美しく見せるために挑戦できたことや、実際に見せることができたものなどはありましたか?

江副 シンメトリーのポーズや組み技など、1人ではできないポールダンスの面白い技をいっぱいお見せできたことは、すごくよかったなと思っています。ただ、どちらかというとダンスシーンについてはもう、CGチームの頑張りあってのものでして。私自身は完成したものしか観ていないので、実際の工程についてはぜひ乙部さんにお話しいただいて……完成したものを観たときには、「本当にすごい技術だな!」と思いました。CGって接触の表現がすごく苦手で、本来はポールを掴む描写すら難しいんですよ。でも手を繋いだり脚の間に入っていったりと(笑)、その難しさを全然感じさせないぐらい美しく作っていただけて、心から感動しましたね。

――その手を繋ぐシーンを含むリリアとスバルのものも含め、振付が決まるまでにはどんなプロセスを踏まれているのでしょうか?

江副 まずは曲を発注させてもらいまして、ダンサーさんに曲のバックボーンについてのお話をさせてもらったうえで、「こういう要素を入れてほしい」みたいなオーダーも含めて振付を発注する……という流れです。「Burning Heart」については、リリアとスバルがライブ中に事故になりかけてしまうというのは元々想定していたので、「『手を掴む』という動作はどこかに入れていただきたい」というオーダーはさせてもらっていました。でも、あそこまで曲とハマるとは思っていなかったので、実際振付を観たときにはとても感動しましたね。その他の曲も、振付を考えてくださったダンサーさんたちがしっかりドラマも読み取ってくださったうえで、楽曲にも物語にもピッタリな振付をしてくださっています。

――それにしても、ユカリの脚の間にサナが入ってきたのを観た瞬間は、さすがに驚きました。

江副 あれは私も振付動画を初見で見た時「こんなことできるの!?」って驚きました。モーションキャプチャーの撮影で実際に観ていても、「これ、どうなってるの?」となってしまうくらいで(笑)。しかもそのあと、サナがユカリにもたれかかって背を反るじゃないですか?あのあたりは「重くないのかな?」みたいに気になってしまいました(笑)。たぶん実際はかなり重さを感じているんでしょうけど、ダンサーさんはそういう大変さを全然感じさせないんですよね。そうやって美しく魅せてくれているダンサーさんのことを「本当に超人だなぁ……」と思いながら、毎回モーションキャプチャーのときは拝見していました。

――では続いて、シングルスの曲については監督から振付にどんな要素をリクエストされたのか、お教えいただけますでしょうか。

江副 大前提として、こちらも曲ごとのテーマをもとに、あらかじめ表現したいものについてはお伝えしまして。あと「これだけは入れたい」みたいな要望もさせてもらいましたけど、それ以外はダンサーさんにおまかせでした。シングルスの曲もそれぞれすごく要望を噛み砕いていただいて、ピッタリの振付を上げてくださったので、本当にありがたかったです。例えばユカリだったら、4連覇中というところで、自分との闘い、さらなる高みを目指していくような曲だったので……「一番すごいのをお願いします」とお願いしました(笑)。そうしたら力強い部分と超人的な軽やかなアクロバットが必要になって、それぞれの長所を持ったダンサーさん2人で、ユカリ1人を表現していただいたんです。

――なるほど。“女王感”のようなものが伝わってくる、強さと美しさを兼ね備えたダンスには、そんな成り立ちがあったんですね。

江副 なので、いつも「Saintly Pride」を観るときは、「2人の超人パワーを持ってるユカリって、やっぱり最強だなぁ」という気持ちになります。

――一方ヒナノも、トラウマを乗り越えながら軽やかにみんなを巻き込んでいく姿が印象的でした。

江副 YouTube版のときの曲は「ちょっと不安だけど、頑張るよ」というものだったんですけど、今回はそこから成長して「もっとお客さんを、ポールダンスで楽しませよう!」という気持ちを込めて踊っているんです。なので「これが私からのプレゼントだよ!」みたいな気持ちで観客をどんどん巻き込んでいけるように、「クラップは絶対入れてほしい」とお願いしたんです。そうしたら、東大路さんが曲の中にすごく難しいクラップを入れてきてくださったんですけど(笑)、それすらファンの皆さんは楽しんでくださったみたいで、すごく盛り上がる曲になりました。

――そしてミオはミオで、人魚姫にちゃんとなれているといいますか。

江副 そうですね。あの曲は、よくある「人魚姫が人間になる」というものの逆をやろう、という乙部さんのアイデアがきっかけで生まれたんです。タイトスカートを開いて脚にしたり、閉めて人魚になったりというところもすごく面白いですし、実際踊ってくださった方もあのタイトスカートを履いて練習してくださっていたおかげですごく人魚っぽい表現になりました。あと、浮遊感みたいなものを出すために腕だけで演技している部分もあるので、「すごく腕力がいるんだろうな」とも思います。一見、全然そうは見えないんですけど……。

――サビの部分は、腕だけでポールを抱えて脚をヒレのようにパタパタしていますからね。

江副 はい。笑顔で綺麗にみせていますけど、相当大変なはずなんですよ(笑)。しかもダンサーさんも、モーションキャプチャーのときから笑顔で踊られていたんですよ。動きだけのキャプチャーなので本当は表情はなくてもいいんですけど(笑)、そこまで表現されるところも、やっぱり「プロだなぁ」と感心しました。

――そしてノアのシングルス曲「剣爛業火」は、かっこよさと美しさを兼ね備えたステージとなりました。

江副 YouTube版の「眩暈の波紋」は美しくてちょっとしっとりとした曲だったので、「ノアの他の一面も、ダンスを通じてお見せしたい」ということで、ちょっと激しめの和ロックを発注させてもらいました。

――シングルスのトップバッターだったのもあって、ダンスの途中で刀が出てきたのには非常に驚きました。

江副 これ、実はKAORI先生から「刀、使ったりもできますよ」と御提案いただいたのがきっかけになったんですよ。それで「ぜひ!」ということで……100均のプラスチックのおもちゃの刀を使って(笑)、モーションキャプチャーをしていただいたんです。ただ、刀で片手が埋まってしまうので、すごく大変そうでしたね。あと、1回OKが出たあとに、「やっぱりちょっと納得いかないので、もう1回やらせてください」とダンサーさん自ら申し出てくださって……ダンサーの皆さんのプロ意識には、本当に頭が下がります。

――意図されたように、この曲を通じて優しく見守っているようなイメージ以外の一面に触れることができて、ノアへの興味がさらに湧いてきました。

江副 よかったです。「優しくておとなしいだけじゃないんだよ」という内面をちょっとは垣間見せることができたとは思うので、ノアの抱えているものみたいなところもどこかで出していきたいですね。

やりたいことはまだ山積み!今後の『ポルプリ』への構想・アイデアに迫る

――さて、劇場版Blu-rayの特装版には昨年開催されたスペシャルイベント“Wish Upon a Polestar”の模様も収録されます。

江副 私も現地に観に行ったんですけど……本当にすごくて。このイベントは今回初めてパッケージ化されるものですし、配信も期間限定だったので、私もずっと「また観たいなぁ」と思っていたんです。なので今回収録が決まったことが、私的には一番盛り上がったところなんです(笑)。だって、今まで観たことないじゃないですか?声優さんが歌うバックでポールダンスを踊っている光景って。しかもそれが、すごく綺麗で迫力があるんですよ。あのパフォーマンスを生で観られたことはとても貴重な機会だったと感じているので、それを映像の形であってもまた観られることが本当に嬉しいです。

――音楽コンテンツで、声優さんが自分で歌いながら踊ってキャラクターを表現するのとは違って、2人でキャラクターを表現しているわけですからね。

江副 そうですね。声優さんという声のプロとダンスのプロのステージを観て「……すごいステージだなぁ……」と、ぽかーんとなりながら観ていたのを思い出します(笑)。それに、声優さんたちの衣装もすごくキャラクターを表現されていたうえに、とても似合っていて。あの衣装もたくさんの方に観てもらいたかったんですよね。

――取材やモーションキャプチャー撮影のときとは違って、生の歌とあのポールダンスが合わさったことによる良さみたいなものも感じられましたか?

江副 ありましたね。それこそ映像を観ていただければ伝わると思うんですけど、ダンサーさんと声優さんでポールを挟んでシンメトリーになるところで、まさに“2人でひとつのキャラクター”みたいな表現があったりと、すごく面白い演出がたくさんされているんです。それに、ああいう広い会場で照明もガンガン使ったプロのポールダンスを観る機会自体がなかなかないと思うので、何度でも観ていただけたら嬉しいです。劇場版で『ポルプリ』を知ってくださった方は、タイミング的に行けなかったイベントでしょうから、そんな方にもぜひ観てお楽しみいただきたいですね。

――ちなみに、そのイベントでも披露された主題歌「Starlight challenge」になぞらえてお聞きしたいのですが……江副監督が『ポールプリンセス!!』という作品を通じて、次に挑戦してみたいことを挙げるなら、どんなことですか?

江副 ポールダンスって、まだまだ可能性がありまして。大会ではポールを2本立ててその間を行ったり来たりしながら演技したり、作品イベントのオープニングアクトのように1本のポールに5人でつかまるということもできたりと、表現が無限大なんです。もちろんフロアでのダンスも素晴らしいですけど、ポールダンスは縦軸を使った演技によって表現が無限大になる、すごく可能性のあるダンスだと思います。なので、今後もっともっと面白いダンスをお見せしていきたいですし、それを表現するためにもまだまだ出していないキャラクターの一面やまだ絡んだことのない子たちのやり取りなども、どんどん形にしていきたいですね。CGチームも発注してないのに自ら衣装デザイン上げてくるくらいやる気満々ですし(笑)。

――ということは、既にアイデアなどが上がってきていたりするんですか?

江副 そうなんです。先ほどお話しした「ポールを2本使ってみたい」というものもアイデアとしていただいていますし、あとは「1本のポールに3乗せてみたい」という、私が「さすがにそれは無理では…」と思うようなものも含めて(笑)、CGチームからすごくたくさんのアイデアを出していただけています。

――1本のポールに3人は、なかなか骨が折れそうですね(笑)。

江副 「2人ができたから3人もできるんじゃない?」みたいなノリでおっしゃるので、私は「いや、そんなに簡単かな?」と思ってしまうんですけど(笑)。でも、それぐらい前向きにどんどんチャレンジしたいとおっしゃってくれていることはとても嬉しいですし、私自身もそれを形にできる日が来るのを楽しみにしています。

――監督自身も、劇場版パンフレットの時点で「尺があればもっとやりたいシーンがある」とおっしゃっていましたし。

江副 そうなんです。やりたいことはまだまだたくさんあるんです!(笑)。せっかくエルダンジュとヒナノたちが出会ったので、一緒にショーをしたりしても面白いでしょうし。他に新キャラがいるのなら「どんな子でどんなダンスをするのかな?」と考えをめぐらせたりと、いろんな構想自体はしているので、今後それを出せる機会があったらいいな……と願っております。

――では最後に改めて、『ポールプリンセス!!』という作品を愛し続けてくれている皆さんへのメッセージをお願いします。

江副 本当に、公開前はこんなにロングランになるとは全然想像していなかったので、この作品は皆さんの愛に支えられてきたものだということをすごく実感しています。その大きな愛にぜひお応えしたいですし、私自身にも「これだけでは終わりたくないな」という気持ちはすごくありますので、また何か皆さんに新たな展開をお届けできればと思っております。ぜひこれからも『ポールプリンセス!!』の応援を、よろしくお願いします!